【2026年8月「ウェルネスWAVE」ラジオレポート】株式会社大英工務店 鮎川貴大さん |建設業の高齢化から考える「仕事と健康」の新しい関係
毎週土曜日に放送しているCROSS FM「ウェルネスWAVE」。
2026年8月は、株式会社大英工務店 取締役部長の鮎川貴大さんをゲストにお迎えし、3週にわたってお話を伺いました。
テーマの一つとなったのが、建設業界が抱える「若手不足」と「職人の高齢化」です。
しかし今回の対談から見えてきたのは、単なる人手不足の話ではありませんでした。
年齢を重ねても、その人が培ってきた経験や技術を生かしながら、社会とつながり続けるにはどうすればいいのか。
そこには、これからの健康経営、人的資本、そして地域社会を考える上で重要なヒントがあります。
建設業は、地域の暮らしを支える社会インフラ
大英工務店は、大英産業の新築木造住宅について、基礎から屋根までの大工工事を担っています。
住宅は、私たちが生活する上で欠かせない社会基盤です。
そして、その住宅を実際につくっているのが職人です。
ところが現在、その職人を取り巻く環境は大きく変化しています。
国土交通省によると、2024年の建設業就業者のうち55歳以上は36.7%。一方、29歳以下は11.7%にとどまります。
建設業は、「若い人をどう増やすか」と同時に、「ベテランの経験をどのように次の世代へ残すか」を考えなければならない時代に入っています。
「働けなくなる」ではなく「働き方を変える」
年齢を重ねれば、身体は変化します。
若い頃と同じように重い物を持ったり、長時間現場に立ち続けたりすることが難しくなる人もいるでしょう。
だからといって、その人の価値までなくなるわけではありません。
ここに、大英工務店の「出張子供大工」という取り組みの面白さがあります。
もともとのきっかけは、家づくりで生まれる木材の端材を「捨てるのはもったいない」という発想でした。
端材から子ども向けの木工キットをつくり、その制作工程の一部を障がい者支援施設へ依頼する。
さらに幼稚園や保育園へ出向き、子どもたちに木工体験を提供する。
そして、そこで先生役となるのがベテランの大工職人たちです。
現場で培ってきた技術が、「家を建てる技術」から「次の世代へ伝える技術」へと役割を変えていきます。
人は「役割」が変わることで、もう一度元気になることがある
特に印象的だったのは、参加した職人たちの変化です。
当初は、「なぜ大工が保育園へ行くのか」と戸惑う声もあったそうです。
ところが、実際に子どもたちの前に立つと変化が生まれました。
子どもたちに見られるから身だしなみを整える。
もっと安全で楽しい遊具にしようとアイデアを出す。
職人同士の会話も増えていく。
誰かから必要とされ、自分の経験が人の役に立っていることを実感する。
これは、健康を考える上でも見逃せない視点です。
私たちは健康というと、運動、食事、睡眠、健康診断など「身体」を中心に考えがちです。
もちろん、それらは重要です。
しかし、自分には役割がある、誰かに必要とされている、社会とつながっている。
そうした感覚も、人生を自分らしく生きるための大切な土台ではないでしょうか。
建設現場では「身体を守る」ことも経営課題
一方で、職人が長く働くためには身体を守る環境も欠かせません。
特に夏の建設現場では熱中症対策が重要です。
厚生労働省の統計でも、建設業は熱中症による労働災害が多い業種の一つとなっています。
大英工務店では、定期的な水分補給、スポーツ飲料の会社支給、異変を感じた際にお互いに声を掛け、休憩できる環境づくりなどに取り組んでいます。
さらにグループではチーム対抗のウォーキング企画など、楽しみながら身体を動かす仕組みもつくられています。
「健康に気をつけてください」と個人に任せるだけでは、行動はなかなか変わりません。
企業が環境や仕組みをつくる。
そして職場の仲間同士が声を掛けられる文化をつくる。
健康経営では、この両方が重要です。
One Day Designとして考えること
今回の対談を通して、改めて考えさせられたことがあります。
高齢化への対応とは、「何歳まで同じ仕事を続けられるか」を考えることだけではないのではないか、ということです。
身体が変われば、仕事の仕方も変わっていい。
現場の第一線から、技術を伝える側へ。
つくる人から、育てる人へ。
身体的な負担を調整しながら、それまで蓄積してきた経験や知識を別の形で生かしていく。
それも一つの予防であり、人的資本を守る方法だと考えます。
企業には、働く人の身体を守ることに加えて、「その人が次に活躍できる場所」を考える視点が求められます。
個人には、自分の身体の変化を知り、将来もやりたいことを続けるために今から準備する健康リテラシーが必要です。
そして地域には、企業、教育、福祉、子どもたちなどがつながり、人の経験や能力が循環する場をつくることができます。
端材から始まった一つの活動が、福祉につながり、子どもの学びにつながり、職人の新しい仕事につながっている。
ここに、この取り組みの本当の価値があるように思います。
まとめ
建設業の高齢化や人材不足を、「人が足りない」という数字だけで捉えると、答えは採用だけになってしまいます。
しかし、本当に考えるべきなのは、
今いる人がどうすれば長く働けるのか。
これまで培ってきた技術をどう次の世代へ渡すのか。
年齢や身体の変化に合わせて、どんな新しい役割をつくれるのか。
ということではないでしょうか。
健康とは、病気にならないことだけではありません。
何歳になっても自分の経験を生かし、誰かに必要とされ、自分らしく社会とつながり続けられること。
「未来の健康をデザインする」とは、身体だけではなく、そうした働き方や地域の仕組みまでデザインすることなのかもしれません。
あなたの会社では、ベテラン社員の「できなくなったこと」ではなく、「これからも生かせること」に目を向けられているでしょうか。
鮎川さん3週に渡り貴重なお話ありがとうござました。
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